CONTRACT TYPES請負 / 準委任 / 派遣民法の条文つき
業務委託の契約形態の整理
「業務委託契約」という名前だけでは、何を頼んだのかが決まりません。民法の条文にそって、請負と準委任を見分け、派遣との境目を確かめます。
請負
- 目的
- 仕事の完成
- 報酬
- 仕事の結果に対して支払う
- 例
- 看板の製作・施工、パンフレットの制作、ネットワーク工事
- 根拠
- 民法第632条
準委任
- 目的
- 事務(業務)の処理そのもの
- 報酬
- 特約があるときだけ。履行割合型と成果完成型がある
- 例
- 営業代行、コールセンター、記帳代行、コンサルティング
- 根拠
- 民法第643条・第656条・第648条・第648条の2
労働者派遣
- 目的
- 人材を受け入れ、自社が指揮命令する
- 規律
- 労働者派遣法(許可を受けた派遣元から受け入れる)
- 注意
- 請負・準委任の名目でも、実態が指揮命令なら派遣に当たる
- 根拠
- 昭和61年労働省告示第37号
請負と準委任の違いを、条文で確かめる
| 確かめる点 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 約束の中身 | 仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する(第632条) | 法律行為でない事務の委託。委任の規定を準用する(第656条) |
| 報酬 | 仕事の結果に対する報酬として定める | 特約がなければ報酬を請求できない(第648条第1項)。履行の割合に応じた報酬(同条第3項)、成果に対する報酬(第648条の2)の2つの型がある |
| 相手の注意義務 | 完成させる義務。契約内容に適合しないときの責任が問題になる | 委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(第644条) |
| 不具合の通知期限 | 種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知しないと追完請求・報酬減額・損害賠償・解除ができない(第637条第1項) | 成果物の完成義務そのものがないため、請負のような仕組みではない。成果完成型でも目的は業務の遂行(一般的な整理) |
| 中途解除 | 仕事が完成しない間、注文者は損害を賠償していつでも解除できる(第641条) | 各当事者がいつでも解除できる(第651条第1項)。相手に不利な時期の解除は損害賠償が必要になる場合がある(同条第2項) |
表の条文の内容は e-Gov 法令検索の民法の本文から要約しました。「一般的な整理」と書いた箇所は条文そのものではなく、民法の構造からの整理です。
準委任の2つの型
2020年4月施行の改正民法で、準委任は履行割合型(第648条)と成果完成型(第648条の2)に整理されました。
契約書には、「履行した時間・工数に応じて支払う」のか「成果の引渡しに対して支払う」のかを書き分けてください。成果完成型にしても、請負とは異なり、目的は業務の遂行であるという整理が一般的です。成果物の完成と不具合の責任まで求めたいときは、請負として書くほうが意図が伝わります。
頼むものから、契約形態を選ぶ
| 頼みたいこと | 向く形態 | 契約書に書くこと |
|---|---|---|
| 完成品がほしい(看板・印刷物・動画・工事) | 請負 | 仕様、納期、検収の方法、不適合があったときの対応、代金と支払期日 |
| 作業をしてほしい(代行・運用・相談) | 準委任(履行割合型) | 業務の範囲、報告の頻度、報酬の算定方法(時間・件数・月額)、再委託の可否 |
| 成果に応じて払いたい(件数・納品物単位) | 準委任(成果完成型)または請負 | 成果の定義と引渡しの条件。成果が出なかったときの報酬を明記 |
| 自社の指示で人に働いてもらいたい | 労働者派遣(許可を受けた派遣元から) | 請負や準委任にしない。指揮命令は派遣の場合にだけ |
派遣との境目(偽装請負)
厚生労働省の告示は、請負の形式であっても、次のどちらかに欠けるときは労働者派遣事業を行う事業主とする、と定めています。
- 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること: 業務の遂行方法や評価の指示、始業・終業・休憩・休日などの管理、服務規律、配置の決定を、請負側が自ら行う。
- 業務を自己の業務として独立して処理していること: 資金を自らの責任で調達し支弁する。事業主としての法律上の責任を負う。自己の機械・設備・材料、または自らの企画や専門的な技術・経験で処理する。
発注側の担当者が、請負先の作業員に直接指示を出す運用は、この境目を越えやすい点です。指示は請負先の責任者を通して出す、という運用を契約書にも書いておくと安全です。
印紙税の区分
請負の契約書は印紙税の第2号文書(記載金額により非課税から課税)、継続的取引の基本契約書は第7号文書(1通4,000円。契約期間が3か月以内で更新の定めがないものを除く)です。準委任・委任の契約書がどの号に当たるかは、このページでは扱いません。内容によって異なるため、国税庁の案内か税務署でご確認ください。
契約書を作る前の確認
契約の形態を決めたら、発注前チェックリストで、取適法・フリーランス法・インボイス・電子取引データの保存・個人情報の委託先監督を確かめてください。
出典と確認日
本文は、次の公的機関のページを当事務局が読んで整理したものです。法令・制度は改正されるため、実際の判断の前に原文を確認してください。
- e-Gov 法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)第632条・第636条・第637条・第641条・第643条・第644条・第648条・第648条の2・第651条・第656条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(確認日 2026年10月19日・条文は e-Gov 法令 API(v2)で取得)
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号・最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf(確認日 2026年10月19日)
- 厚生労働省「「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00020.html(確認日 2026年10月19日)
- 国税庁「タックスアンサー No.7102 請負に関する契約書」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7102.htm(確認日 2026年10月19日)
- 国税庁「タックスアンサー No.7104 継続的取引の基本となる契約書」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7104.htm(確認日 2026年10月19日)